もう1つの「ブロークバック・マウンテン」
マルディグラのパレードが行われた、3月4日の土曜日。その日の新聞、The Sydney Morning Heraldの1面に載ったこの写真。
横たわった馬を抱き締めるカウボーイ。
「いい写真!」ってしばらく眺めていたけど、そのタイトルは「Meet Heath's mate, the real gay cowboy」
そう、Heathとは、映画「Brokeback Mountain/ブロークバック・マウンテン」の主演のヒース・レジャー。そのヒースの友人に本当のゲイのカウボーイがいる!ってこと。
英語は得意ではないけど、ちょっとこの記事をかいつまんで説明。(自分の意訳なので、必ずしも正確とは言えないけど、大きな意味ではあってると思います)
この写真のカウボーイ、名前はアダム。ゲイの彼は、田舎で生まれ育って、ゲイって何なのかも知らなかったそう。
そんなある日、彼は車の事故で若者を死なせてしまう。19歳の彼は罪を認め、刑務所へと入所する前日、崖から飛び下り自殺を決意する。
しかし、何かが彼を思いとどまらせ、6カ月の刑務所の生活を送ることになる。
多くの犯罪者が集まる刑務所では、そこでさらに犯罪の手口を習い、犯罪の常習犯になる人間もいる。彼は、そういったことに陥ることなく、また自分のセクシャリティにも関心を持つことはなかった。
そして出所した後は田舎の家を離れ、旅にでる。
人の少ない田舎町を回って、そこで危険と隣り合わせの仕事をするようなる。
自分がゲイであることに悩んでいた彼は、自分を信じることができず、自分を痛めつけることしかできなかった。
数年がたち、同じく危険なロディオ乗りの体験から、彼は馬との生活をするようになる。
そして自らビジネスを立ち上げ、馬の調教を始めた。
そして2002年にオーストラリア映画「Ned Kelly」で、馬の調教師として撮影に参加することになる。
そこは、まったく別の世界だった。
ある日、スタッフのパーティーで怪我を追ったアダム。病院に真っ先に駆け付けたのは映画の出演者の1人、オーランド・ブルームだったそう。
セットにいた女性に「何してるの?」って訪ねたら「主演女優よ!」って、そうナオミ・ワッツだった。
そして、主演のヒース・レジャーとも乗馬の練習で親しくなっていく。
この田舎で育った彼が、正反対のハリウッドの世界を見ること、さらに親しい友人の1人がカミング・アウトとしたことが、彼にとっての大きなターニンク・ポイントとなった。
そして、彼もその友人に従いついにカミング・アウトし、ゲイ・バーにも飲みに出るようになった。
彼が昔、1度だけゲイ・バーに出掛けたことがあったが、そこでゲイであることを受け入れない彼は、ホモファビックな行動に出てしまい、男性の指を折ってしまったそう。
今回は、そんなこともなくゲイのカップルと話を始め、友達となった。
「自分は誰かを愛したいだけ、そして愛されたいだけ」と、その友達に語った。
そして3年がたち、「ブロークバック・マウンテン」が話題になっている今、自分のことを語る時期だと思った彼は、特に田舎で過ごすゲイの少年に対して、彼の体験を聞いて欲しいと願っている。
彼の両親はいまだにゲイである彼を受け入れられないけど、彼には多くの友達がいるそう。
「もし自分がもっと早くにカミング・アウトしていれば、こんないろいろな体験はできなかった。だから後悔はしていない。それが人生だから」
…ということで、かなり壮絶な人生。今の時代、インターネットも発達してるし、今さらゲイで悩む人なんかいない!って思うけど、実際こうしたアウトバックと呼ばれる田舎で生活してるゲイにとっては、大きな悩みだろう。
自分がまわりの人とは違うことで、自分を愛することもできず、逆に自分を傷つけてしまう。自分を受け入ることができずに自殺する若者も多いと聞く。
ある日、そういったことで死を考えてる男の子が、テレビのニュースで何百人ものゲイやレズビアンがパレードしている姿を見る。1人だ、と思っていたのが、こんなに多くの同じ人間がいると思う。「1人ではない」って、ほんと力強いことだ。
また、今まで1度もできなかったという「自分は誰かを愛したいだけ、そして愛されたいだけ」というアダムの言葉は、ほんとに悲しい。
華やかなパレードの裏では、まだこういったゲイの人がいるのも事実。
今年のパレードでは、かなり茶化されたカウボーイが多かったけど、こういったアダムの話を、メジャー新聞の1面に、そのパレード当日に載せるのは、パレード以上に大きな意味を持つと思う。
by funnyfelix | 2006-03-15 22:04 | g-life